第3回韓国水道水フロリデーション研修が無事終了ましたので、お知らせします。
韓国では1981年から水道水フロリデーションが実施され、2011年で30年がたちました。また、2012年10月には仁川市でフロリデーションが実施予定です。研修・交流を通して、水道水フロリデーションの理解を深め、今後のわが国の地域歯科保健について一緒に考えてみませんか?「
百聞は一見に如かず」です。是非第4回にご参加ください。


過去の韓国の水道水フロリデーション研修情報についてはこちらをクリック
水道水フロリデーション
水道水フロリデーション
水道水フロリデーション研修 in 釜山第3回
 今回の研修はやいことで3回目となりました。2年前の1回目でなかった釜山港付近のロッテデパートなどがあったりと月日を少し感じることができました。4年後にはそのロッテデパート付近に100階のビルができるとか。
 今後とも日本で水道水フロリデーションが実施(再開)されるまで、釜山研修を企画したいと思います。その際はメーリングリスト、ホームページでお知らせいたします。是非ご参加ください。とても満足できる研修になると思います。
研修に関するお問い合わせはこちら
NPOnitiF-owner@egroups.co.jp
 第3回は、山内皓央NPO日F会議副会長とともに、福岡歯科大学、東北大学、岡山大学、埼玉県立大学保健医療福祉学部の先生および学生、開業歯科医師、行政の歯科医師、市議会議員等様々な職種の方々が参加されました。参加された方々は、将来のわが国の地域歯科保健を担い、貢献することと思います。
今回は、
1.水道水フロリデーションを実施している昌原(チャンウォン)市の石洞(ソクトン)浄水場
2.水道水フロリデーションを実施している昌原(チャンウォン)市の大山(テサン)浄水場
3.昌原(チャンウォン)市の保健所訪問
4.釜山国立大学歯学部訪問および歯学部長との懇親会
5.韓国と日本の水道水フロリデーションの状況比較。
をご紹介したいと思います。
1.昌原市(旧鎮海市)の石洞(ソクトン)浄水場の水道水フロリデーション状況
「韓国の水道水フロリデーションの30年の歴史はここから始まった」という記念すべき浄水場です。鎮海(チンヘ)市は、いわば韓国のグランドラピッズ。果たして日本のグランドラピッズは?
①基本情報
石洞(ソクトン)浄水場は、浄水量45,000㎥/日、給水人口37,720人で1980年11 月に大韓民国保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)による「「口腔保健示範都市」に指定され、1981年4月に
全国最初に水道水フロリデーション事業が実施された。1997年に施設が改装され、現在に至る。
②フッ化物添加法
添加フッ化物はフッ化ナトリウム(粉状、NaF)、添加濃度0.8ppm(韓国の上水道基準は1.5ppm以下)、添加方式は粉末フッ化物投入方式。
濃度検査は、24時間自動測定器での測定に加え、1回/日の機器による測定

フロリデーションに詳しい水道施設課長

モニターで24時間管理

フロリデーション水は健康に優しい
清い水です。

上図の「
F」の部分がフッ化物の添加する場所です。


フッ化物の添加量をコントロールする機械





フッ化ナトリウム粉末の袋(中国製)
1日のフッ化ナトリウム使用量は62.3㎏
1袋25㎏なので、これを1日3袋使用
以前は日本から輸入していたが、現在は中国からの輸入が多い。フッ化ナトリウム粉末は保健所が購入。

フッ化物添加装置

フッ化物を水道に流し込む管
2.水道水フロリデーションを実施している
昌原(チャンウォン)市の大山(テサン)浄水場

大山(テサン)浄水場で記念撮影

大山(テサン)浄水場でいただいたフロリデーション水で乾杯!!
大山(テサン)浄水場についてはこちらをクリック(第1回の記録)
3.昌原(チャンウォン)市の保健所訪問
 日本の保健所の口腔保健事業の大きな違いとしては、水道水フロリデーション事業があることと、学校へ訪問して学童全員にシーラント事業を実施するところです。まさしく米国ヘルシーピープルのむし歯予防対策に沿ったエビデンスに基づいた戦略です。
 水道水フロリデーション事業での役割としては、水道水フロリデーションに関する住民への啓発、使用するフッ化物の購入、浄水場のフッ化物濃度のモニター管理等があります。シーラントの事業は、2012年からシーラントが医療保険の適用になることから、学校でのシーラント事業がフッ化塗布物事業に転換されるとのことでした。このことにより、シーラントの普及率が落ちる懸念があるとのことです。
昌原保健所
1980年開設
建築面積:610坪
建築規模:地上3階、別館2階
3階:保健行政事務室、文庫所
2階:所長室、健康都市運営委員会
   健康管理事務室、結核室
   物理治療室、痴呆相談室、電算室
1階:相談室、診療室、身体検査室、
   病理検査室、放射線室
別館2階:精神保健センター及び会議室
別館1階:予防接種室

保健所課長による口腔保健事業について説明
口腔保健担当職員
担当係長1名、歯科衛生士3名
歯科医師1名、期間制労働者4名
口腔保健事業内容
水道水フロリデーション事業
高齢者口腔保健事業
小児齲蝕予防事業
保健所口腔保健室運営
学校口腔保健室運営(4か所)
乳児フッ化物塗布事業
フッ化物洗口事業
地域児童センター口腔保健事業
口腔保健教育
4.釜山国立大学歯学部訪問

釜山国立大学訪問では、施設の見学と、金鎮範先生の水道水フロリデーションに関する講義を拝聴しました。
以下、講義内容の概要をご紹介いたします。
 現在の水道水フロリデーションの給水人口は6.2%で、反対運動などがあり、ピーク時より減少した。しかし、国は、法や財政の支援に加え、TV、地下鉄、バスなどの媒体手段を使って普及啓発も実施した。また、大韓医師協会、環境運動団体などの水道水フロリデーションの有効性、安全性について検討し、推奨した。その結果、2012年10月に人口270万の仁川で実施することとなり、ソウル市や他の地域でも水道水フロリデーション実施に向けての動きがある。
 韓国での水道水フロリデーションのう蝕抑制率は30-40%である。アメリカで実施された齲蝕予防率40-50%と若干低い。現在韓国ではフッ化物配歯磨剤の普及率は97.4%であり、対照群の大部分がフッ化物配合歯磨剤を使用していることから、希釈効果(Dilution Effect)によるものと考えられる。水道水フロリデーションの便益費用費は90-179である。以上より、水道水フロリデーションは安価で、効果が高く、地域全体が恩恵を受ける最も公衆衛生特性が高いむし歯予防対策である。
 ドイツ、フランス、スイス、中南米では、食塩フロリデーションが実施されているが、食塩フロリデーションの濃度調節は難しく、食塩の制限が必要な人には勧めることができないため、水道水フロリデーションのほうが公衆衛生特性が高い。

山内副会長の釜山国立大学歯学部長への
訪問挨拶

金鎮範先生の講義およびディスカッション
皆熱心に講義を聴き、質問も多くでました。
5.韓国と日本の水道水フロリデーションの状況比較。
最後に、我が国での問題点を探るため、韓国と日本の水道水フロリデーションに関する比較をしてみました。
比較表に関するお問い合わせはこちら
NPOnitiF-owner@egroups.co.jp

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